2012年5月29日火曜日

描きいけ(3-20)


Nさんの作品です。

『描きいけ』は花材と花器を決めたら、
いける前に頭の中でどんな作品にしたいか考え、絵を描きます。
その後にいけるのですが、実際にいける段階で気づく事がたくさんあります。

植物はそれぞれに主張するところがあり、
なかなか頭で考えていた通りにならないところもあります。
また、いけていく中でこの方がおもしろいと感じる発見もあります。

考えていた通りにならないのはなぜか、この方がおもしろく見えるのはなぜか、
この部分を考えてみる事が大切です。

花材は「さんごみずき」「だんちく」「ひめゆり」です。


 ◆さんごみずき(珊瑚水木)[ミズキ科]

         
木肌の赤が鮮やかで、秋から冬に葉の無い状態でクリスマスやバレンタインなどの
作品に使用する事が多いです。
葉や花が付いているものは、私は今回初めて見ました。
葉の先が木肌と同じに赤く染まっていてとてもきれいです。



 ◆だんちく(段竹)[イネ科]

 

今回のだんちくはまだ若く、小振りで葉が上を向いて立っています。
成長すると葉が長くなり、曲線を描いて流れます。
緑と白の縞が、涼しげな印象です。

水揚げが悪く、水切り後は酢につけて刺激を与えます。


 ◆ひめゆり(姫百合)[ユリ科]


花の大きさは数センチと小さいですが、鮮やかなオレンジが目を引きます。


花器の写真を撮り忘れました。
少し縦長ですが、中央が膨らんでいる壺型です。
作品の中で見てください。



 ◆デッサン


デッサンの段階では、さんごみずきで包むようにだんちくをいけようと考えたそうです。



          ◆作品


実際に花器に入れてみると、だんちくの存在感が強く、
だんちくを作品の中心にすることにしました。
細くて伸びやかなさんごみずきは、外へ向う力を発揮しています。
ひめゆりのオレンジが鮮やかです。


2012年5月28日月曜日

マッスと線の構成(3-13)



Sさんの作品です。

テーマは『マッスと線の構成』です。
植物を集合させて作った「塊」と、植物から見つけ出したり作り出したりした線を
組み合わせて作品にします。

さて、Sさんの作品はどうでしょうか。
花材は「けむりのき」と「ゆうぎりそう」です。

         
 ◆正面


「けむりのき」「ゆうぎりそう」名前のとおり煙と霧を連想させる植物です。

「けむりのき」のマッスはとても幻想的な印象です。
「ゆうぎりそう」も霧のような印象をもつ花ですが、青紫の色が鮮やかです。
マッスに加える事で、けむるようなマッスの印象をより引き立てています。

「ゆうぎりそう」の茎を線の要素として作品に加えています。
もともとは真直ぐな茎でしたが、Sさんが丁寧に矯めて
柔らかな印象の線に作り変えています。

幻想的なマッスに、緩やかな曲線をもつ線を合わせる事でやさしい作品になっています。

「けむりのき」は「スモークツリー」とも呼ばれます。
正式な和名は「ハグマノキ」(白熊木)、[ウルシ科]です。
名前の通り、けむりが立っているように見える木です。

地面に生えている状態を初めて見たのはオランダでしたが、
7〜8㍍かもっと大きかったでしょうか。
大きく育つ事に驚きました。
葉の緑がふわっとけむりの中にあるように見えました。


「ゆうぎりそう」(夕霧草)は[キキョウ科]です。
小さな花が塊になって咲きますが、一つひとつの小さな花の中央から
細い糸のような花柱が長く突き出しています。
そのことから、全体が霧がかかっているような印象です。

◆花器
花器は、下段に大きな穴が3ヵ所、上段に小さな穴が3ヵ所あるものです。
剣山を入れて使用します。
直径20㎝位です。

2012年5月25日金曜日

あらゆる角度からの視線を考える(3-19)

Nさんの作品です。

テーマは『あらゆる角度からの視線を考える』です。
どの角度から見ても、視線を受止めることの出来る緊張感をもった作品を目指します。
見る角度によって表情が大きく変化する作品がおもしろいです。

さて、Nさんの作品はどうでしょうか。
           
 ◆正面

正面からは、すくっと立ち上がった「ばいかうつぎ」が印象的です。
左に流れる「ふとい」の直線と曲線の動きもおもしろいです。
曲線を描いている「ふとい」は元は真直ぐ、Nさんが丁寧に矯めて曲線にしました。

花材は、ばいかうつぎ、ふとい、しゃくやくです。

ばいかうつぎは、
漢字では「梅花空木」と書きます。
ユキノシタ科です。
字のごとく、花は梅の花に似ています。
枝は真直ぐな印象で、花や葉がまんべんなく付きます。
やわらかな緑に白い花が清潔な感じです。

ふといは、
漢字では「太藺」と書きます。
カヤツリグサ科です。
なんで、こんなに細いのに「ふとい」という名前なんでだろうと思っていましたが、名前の由来は、太い「イグサ」と言う意味だそうです。
真直ぐに見えても植物なので、1本1本に異なる表情があります。

しゃくやく、
漢字では芍薬と書きます。
ボタン科です。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と古くから美人の形容に用いられます。
大きく華麗な花です。
濃い赤紫色のものをよく見ますが、今回の芍薬は明るい赤です。



◆器 
横巾25cm位、奥行4cm位の薄くて小型の器です。
剣山が入らないため、上のワイヤーメッシュが花留めです。
丸めてあるのですが、上段の穴と下段の穴の2ヵ所に茎が通ると留ります。
差し込める場所に制約があり、剣山程は自由になりません。

たまたま留った花にも、とてもおもしろい表情をもっている場合があります。
偶然のようでも、そこに表れているおもしろさを見逃さないことが大切です。



2012年5月18日金曜日

ちぃ道場で自習(まんさくとそけい)

今日からブログをはじめることにしました

携帯メールの絵文字も満足に使えないのに・・・。
どきどきしています。かなり。

初回は、一昨日の自習をお届けします。

花材は、「まんさく」と「そけい」です。

     ◎まんさく

「まんさく」は漢字では「万作」と書きます。
マンサク科の花木で、春先にリボン状の黄色やオレンジの花が木にまとわりつくように咲きます。
枝はやわらかく、撓めが利きます。

注:いけばなでは、枝を曲げることを「撓める(ためる)』と言います。
  「撓めが利く」とは、曲げて枝の線を作り変えることがしやすいと言うことです。

今日のまんさくは、ちょっと細めです。
三月の末頃は葉っぱは親指大程の大きさでしたが、既に5cm程に。
色はまだ新芽の延長でやわらかな緑です。
陽射しが増すのに合せて、これから濃い緑に変わっていきます。


    
     ◎そけい

「そけい」は漢字では「素馨」と書きます。
モクセイ科の花木で、ジャスミンの一種です。
良い香りがします。
葉の緑がやわらかく、とてもやさしい印象です。

今日は、細く背の高い花器にいけてみました。

             ◆正面から


まんさくは、そのままでは平面な枝振りだったので、かなり撓めて私がおもしろいと思う線に作り変えました。
葉も汚かったり大きすぎたりするものを除き、全体を見ながらかなり整理しました。
そけいは、明るい黄色とやわらかな緑のかたまりとして配置してみました。
作品の横巾は90cm程ありました。

             ◆左から


翌日、懇意にしていただいている焼き鳥屋さんに花材の一部を使っていけさせていただきました。
神保町にある「ぼんちゃん」です。
どれも美味しいのですが、焼き鳥では手羽先、レバー、砂肝が私は大好きです。


こんな感じです。